何故あの子は文武両道なの?

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皆さんこんにちは。ビジョンアセスメントトレーナーの小松佳弘です。

文武両道というワードはよく耳にしますが、本当に可能なのか? 結論からいうと十分に可能です。

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あれもこれも極めるのは難しいと思われがちですが、眼と脳の関係性でいうとどれも同じであるというお話をご案内させて頂こうと思います。

学習面で本を読む・板書をするというのは、眼球運動でいうと「素早く眼を動かし、想像し、行動を起こす」ことを指します。スポーツでは、どうでしょうか? ボールを追いかけ(眼球運動)、想像(タイミングや方向を推測)し、打撃やキャッチ(行動を起こす)するという流れになります。一連の流れは同じですね。結局は「入力」となる情報処理から始まり、「出力」するという流れは、学習面でもスポーツシーンでも変わることはありません。

それでは、なぜ学習やスポーツに向き不向きがあるのでしょうか? それには育ってきた環境過程に、「発達するための運動獲得」がしっかり成されていたかが大きく影響してきます。

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眼球運動はそもそも前頭葉支配で働いており、「前頭葉の未発達=眼球運動の不良」が出てきます。運動の未獲得や不足が発生することで、前頭葉は発達する機会を損なわれます。視覚を育むためには、絶対的に運動をする機会を取り入れ、機能を獲得していく多くの経験が必須となります。そしてその運動は、単調では駄目だということです(1つのスポーツを長く続けることも含む)。

なぜ、運動を取り入れることが視覚発達に関係し、その運動が単調でないほうが良いのでしょうか。発達の過程から解説して参ります。

眼球運動には、「輻輳(ふくそう)」という寄り目をする運動があります。近くに焦点を合わせる際に、この運動が使用されます。実はこの輻輳運動は、生後8ヶ月あたり(個人差あり)のずり這いから始まっているのです。乳児のハイハイ時期は、移動技能を使いながら床を見ることで、輻輳に刺激が送られています。ハイハイ〜高這い〜歩行の順番で「視線の位置」を変えながら、輻輳・移動(運動)・姿勢制御の理解を行っている成長過程にあるのです。

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上手く輻輳が出来ない子の該当しやすいケースとしては、ハイハイの時期が短かったり、移動運動技能としてのハイハイが上手く獲得出来ていなかったり(ハイハイの質)などが挙げられます。ハイハイはクロスパターンという運動になりますが、その刺激を受け前頭葉が発達することで、視覚の理解へと移行することが出来ます。輻輳と小脳機能も関わりがあるという報告もあり、アセスメント(身体評価)していく中で、輻輳が出来ないと小脳機能に何かしらの不全が見られることが大半を占めます。また、小脳は姿勢制御の役割も担っているので、更に姿勢保持も難しいなど色々な出力(身体表現)の課題に影響が見受けられます。

継続的な低強度運動(例えば散歩や太極拳等)を10分 ✕ 週4✕ 16週間行うことで、約2%程の海馬の肥大を促せますので、空間認知機能の向上が期待出来ます。また、持久力も向上しますので=認知機能も十分な向上を育むことが可能です。

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更に空間認知力が備わることで、図形や漢字の理解・スポーツでいうとフィールドの認知やポジショニング等のパフォーマンス向上が十分見込めることとなります。

微細に眼球運動を行うことが出来るようになることで、内容を理解したり、本を早く読むことが出来たり、また一般的な動体視力などの向上にも繋がる為、十分に文武両道が可能となるわけです。

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これらを簡単にまとめますと、眼と脳機能の関係からみると勉強もスポーツも同じ運動の一連動作なのだということを知っていただけると幸いです。しかしながら、難易度や環境も含め、性格や心理的側面から嫌い・苦手だと思い込んでしまうケースもあるので、いかにアセスメント(眼と身体評価)を実施し、その子に必要なタイミングで必要なトレーニングを選定すること、且つ楽しく取り組めるかが課題となります。