疲労の回復法2―森林浴やミドリの香りの抗疲労効果(後編)

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●ミドリの香りの抗疲労効果

ミドリの香りの主成分は、青葉アルコール、青葉アルデヒドです。この香りをネズミに嗅がせてみますと、元気な時には変化はみられませんでしたが、疲労モデルのネズミでは活動量を増やす効果がみられることが分かりました。さらに、よりヒトに近い動物であるサルで調べましたところ、みどりの香りには単純作業に伴う反応時間の低下を改善する効果がみられ、その時の脳の中を覗いてみますと前頭葉の一部が活性化していることも確認されました。

そこで、24名の大学生を対象に7日間みどりの香りを入眠時に30分間使用して、その前後の変化を調べてみましたところ、みどりの香りを7日間用後は疲労や抑うつの得点が有意に改善していました(図3)。

さらに、ライフ顕微鏡(㈱日立システム)という特殊な装置を用いて睡眠・覚せいリズムを調べてみましたところ、ネズミの実験と同様に覚醒時の活動量は香りを嗅ぐ前と比較して7日後には有意に増加していました。疲労回復には、質の良い睡眠が重要であることが良く知られています。そこで、香りを嗅ぐ前の3日間(前)、香りを嗅ぎ始めて1-3日目(中)、香りを嗅ぎ始めて5-7日目(後)における睡眠効率を調べてみましたところ、睡眠効率が95%未満の睡眠障害がみられる10名では香りを嗅ぎ始めて1-3日目(中)より回復がみられ、5-7日目(後)には有意な睡眠効率の改善が確認され(図4)、みどりの香りによる疲労回復効果の一端が明らかになってきていました。

生活環境ストレスに伴う疲労においても、疲労の増悪とともに相対的な交感神経系の過緊張な状態に陥ることが知られていますが、みどりの香りには精神活動に伴う相対的な交感神経系の過緊張を和らげる効果も報告されていますので、今後の活用が期待されています。

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図3. みどりの香りの効果:疲労感と抑うつ
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図4. みどりの香りの客観的効果



医師:倉恒弘彦(くらつね・ひろひこ)
プロフィール
大阪市立大学医学部客員教授として、疲労クリニカルセンターにて診療。1955年生まれ。大阪大学大学院医学系研究科招へい教授。日本疲労学会理事。著書に『危ない慢性疲労』(NHK出版)ほか。

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※この記事は、弊社提携先の株式会社FMCC(倉恒弘彦代表)のコンテンツを連載するシリーズです。「疲労関係」の講演や臨床試験など、弊社までお気軽にお問い合わせください。




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