外斜・内斜の違いと行動パターンの傾向

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こんにちは。ビジョンアセスメントトレーナーの小松佳弘です。

人は常にフィードバックを受け、その状況に関して適応できる優れた動物です。例えば、下記二例の生活を比較してみましょう。二人共、毎日歩いて水を汲みに行く環境に生まれ育つとします。一人は一山を越え担いで帰る環境にいる場合、一人は舗装された綺麗で躓きようのない環境で帰る場合。この真逆の環境によって人の発達は異なり、順応レベルは大きく変化します。


人はその環境に生まれて、「行わないといけないこと」に対し順応し生きています。感覚器官は、常に情報を拾い上げその環境に順応していきます。人が情報を収集する際に必要とする五感。その割合は、「眼87%・聴覚7%・嗅覚3%・触覚2%・味覚1%」と言われており、視覚から収集する情報は全体の約9割近くを占めています。これらの感覚を使い常にフィードバックをしていますので、視覚からの情報はかなり大きな存在といえます。

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筋力は「住んでいる環境」、歯は「食事環境」、では眼はどのような環境でしょうか? 眼は「見ている環境」になります。眼は「日頃なにを見ているか」によって影響します。好んで見ているのか、見ていないといけない環境なのかで変化します。

眼前1m先に調節安静位という場所があり、そこを基準に手前が副交感神経奥が交感神経支配となります。常時手元を見る時間が長い場合、副交感神経が優位に働きやすくなります。ですので、例えば映画を見る際に、アクション系は映画館で、感動系の映画はタブレットなどで鑑賞すると其々より感動が期待できるのではないでしょうか。そのように日頃何をどのような環境で見ているかによって、自律神経の偏りや性格などがある程度決まってくると言えます。

そこを踏まえて、ドイツ式の視機能検査では当たり前のワードになりますが「潜在眼位」というものがあるのをご存知ですか?

「眼位」は眼の位置を指します。遠方視をしたときの目の位置が基準になります。人は皆、眼位にズレを持って生まれます。弊社にて約500名分の統計を取ったところ、その約98%もの人がズレを保有していることが分かりました。そのズレは先天的と言われており、ドイツ式視機能検査で割り出すことができる特徴の一つです。

このズレのことを「斜位」といいます。斜位は大きく分けて、外斜・内斜・上下の3つに分類されます。


今回は、外斜・内斜の2つをご紹介します。

●外斜の特徴
性格:好奇心旺盛・社交的・飽きやすい傾向がある・同時に2つ以上の作業をあまり苦としない
運動:ざっと飲み込み(把握)が早い・サッカーなどフィールドスポーツが得意
その他:寄り目(輻輳)が苦手・顎を上げた状態の姿勢が多い・口が開きっぱなし

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●内斜の特徴
性格:真面目・集中力が高い・大人しい・環境適応に少し時間がかかる
運動:野球など寄ってくるボールの対応が良い・習得するまでに時間を有する
  (自分が納得するまでできたと言わない)
その他:オデコのシワが多い、ぎっくり腰の症状が出やすい傾向
※生まれ育った環境や眼筋のつよさなども大きな影響があります。

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情報収集の割合を大きく占める眼位チェックを、心理的尺度や適性能力テストなどと一緒に照らし合わせると、よりその人の特徴や傾向や癖が紐解けてとても面白いかもしれませんね。これらの結果を「特徴として捉える」のか、「苦手となるものをケアしていくか」によって、外斜と内斜の性格や機能の基準と使い方が変わってきます。

例えば外斜の子が野球をやりたい場合、ビジョントレーニングが有効になってきます! ビジョントレーニングを行うことで、スムーズに動かせる筋力が育ち、苦手なプレーを克服することが十分に期待できます。万が一、斜位が大きな数値だった場合も、眼鏡の介入で矯正も可能です。

この斜位を理解することは、子育てにも役に立つことがあります。母親が外斜・子供が内斜の親子がいました。外交的な母親は非積極的な内斜の子の生活にあまり理解が示せず、「なぜ?」と思うすれ違いから親子で衝突する機会も多かったようです。母親は理解しようと努力しても、自分と違う考えや傾向の子どもに寄り添えず悩みながら子育てを模索していました。しかし、親子で受けたドイツ式両眼視検査をキッカケに、自分と性質が違う子供の斜位を理解し「違いがあっても良いのだ」と、とても心が軽くなったそうです。それからは、内斜に適した環境とその対策を実践し、その子の性能もみるみると開花。内向的で人との係わりが苦手だったその子も、今では社会と繋がろうと懸命に活動していけるようになりました。

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精神的な論じではなく性能の違いを理解することで、どのように付き合えば良いのかが明確に分かってきます。「理解出来たことで心に余裕が出来たのか、私にとってこの子の変わっていると感じるところも魅力として受け容れる機会が増えました」とお母さんは答えていらっしゃいます。

まだまだ眼には解明されていないことがたくさんありますが、非常に面白いものだと思っています。


つづく