あなたの疲労を調べてみよう!
疲れは、誰もが日常生活の中で感じるものです。そのため、自分の疲労の程度が人と比べて強いのか、正常な範囲なのかを判断するのは難しいことがあります。また、疲れを自覚している場合には体の疲れとともに心の疲れがありまして、体と心のどちらの疲れであるのかを判断することも大切です。
そこで、文部科学省研究班が作成した疲労度チェックリストを利用して一度調べてみましょう!これは、体の疲れ10項目(40点満点)と心の疲れ10項目(40点満点)、で構成されており、評価やコメントが示されていますので、自己判断が可能です。
●自己診断疲労度チェックリスト
下記20問の質問に対して、点数記入欄のかっこにあてはまる点数を記入して下さい。
症状の点数:全くない(0点)、少しある(1点)、まあまあある(2点)、かなりある(3点)非常に強い (4点)
A.身体的疲労(各項目0点~4点x10項目:40点満点)
1. 微熱がある
2. 疲れた感じ、だるい感じがある
3. 一晩寝ても疲れがとれない
4. ちょっとした運動や作業でもすごく疲れる
5. 筋肉痛がある
6. このごろ体に力が入らない
7. リンパ節が腫れている
8. 頭痛、頭重痛がある
9. のどの痛みがある
10. 関節が痛む
B.精神的疲労(各項目0点~4点x10項目:40点満点)
1. よく眠れない
2. ゆううつな気分になる
3. 自分の体調に不安がある
4. 働く意欲がおきない
5. ちょっとしたことが思い出せない
6. まぶしくて目がくらむことがある
7. ぼーっとすることがある
8. 思考力が低下している
9. 集中力が低下している
10. どうしても寝すぎてしまう
●自己診断疲労度チャックリスト判定表とコメント
身体的評価
(安全ゾーン) 身体的な疲れはあまりないようです。この状態を維持するように心がけましょう。
(要注意ゾーン) 少しからだがお疲れのようです。休息をとって回復に努めましょう。
(危険ゾーン) この状態が1ヶ月以上続いているのなら要注意。半年以上続く場合は何らかの病気である可能性が高いと思われます。医師と相談しましょう。
精神的評価
(安全ゾーン) 精神的な疲れはあまりないようです。この状態を維持するように心がけましょう。
(要注意ゾーン) 少し精神的な疲れがみられます。心のリフレッシュやリラックスを心がけましょう。
(危険ゾーン) 疲れに伴う精神症状が強く認められます。長く続くようでしたら専門医と相談しましょう。
総合的評価
(安全ゾーン) 全般的な疲れはあまりないようです。この状態を維持するように心がけましょう。
(要注意ゾーン) 少し疲れがみられます。身体的評価、精神的評価をみてみましょう。
(危険ゾーン) かなり疲れが溜まっているようです。身体的評価、精神的評価をみるとともに、長く続くようでしたら医師と相談しましょう。
●疲労病態を早期に自覚するための自己診断チェックリストの作成
日本において、一般地域住民を対象とした複数の調査で約6割の人が疲労を感じていることが報告されていますが、近年の調査ではその半数の人では疲労が半年以上続くか繰り返されていることが明らかになっています。
これは原因不明の慢性的な疲労状態が続く疾患として代表的な慢性疲労症候群の診断基準の一部を満たしている状態です。そのうちの多くは、一晩休息を取っても疲労は回復しないと答えており、このまま放置すると過労状態や慢性疲労症候群のような病的な疲労状態に陥ってしまう可能性があります。しかし、何とか日常生活をこなすことが可能な場合、病院へ行く手間を考えてそのまま放置していることが多いのが現状です。その原因として、疲労を簡便かつ客観的に知る方法がないために自分の疲労を過小評価していることがあげられます。さらに、「疲れているのは自分だけではないから休むわけにはいかない」という周囲への配慮や自己犠牲をいとわない性格も影響することがあるようです。
したがって、慢性疲労を自覚している人々の健康障害を予防し、病的な慢性疲労の可能性がある場合は早期の検査や治療につなげるための、簡便な自己診断疲労度チェックリストの必要性がますます高まっています。そのニーズに応えるために、本研究では慢性疲労症候群の診断基準に記載されている身体症状と精神神経症状を基にこのチェックリストを作成しました。このチェックリストは、健常成人120名と慢性疲労症候群患者127名の結果を基に、その有用性と信頼性の検証がなされています。慢性疲労状態が改善すると、このチェックリストの結果も改善することがわかっています。
つまり、定期的にこのチェックリストで疲労状態の変化をみることができるというわけです。このチェックリストですべての疲労が正確に評価できるわけではありませんが、上手に活用していただいてより健康な生活をおくる一助になることを我々一同願っております。
文部科学省生活者ニーズ対応研究「疲労および疲労感の分子・神経メカニズムとその防御に関する研究」慢性疲労症候群に対する治療法の確立の報告書(2005年、倉恒弘彦)より。
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医師:倉恒弘彦(くらつね・ひろひこ)
プロフィール
大阪市立大学医学部客員教授として、疲労クリニカルセンターにて診療。1955年生まれ。大阪大学大学院医学系研究科招へい教授。日本疲労学会理事。著書に『危ない慢性疲労』(NHK出版)ほか。
※この記事は、弊社提携先の株式会社FMCC(倉恒弘彦代表)のコンテンツを連載するシリーズです。「疲労関係」の講演や臨床試験など、弊社までお気軽にお問い合わせください。