医療機関も導入し始めた、革新的なトイレ換気法

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臭気と感染問題を同時に解決する「世界初のトイレ換気システム」がある。そんな話が昨年入ってきた。最初聞いたときから、「面白い発想だな」と関心を持った。

トイレを家の外と内を分ける「結節点」と捉えると、半導体工場に入る前のエアシャワーの様な存在になるのではないか、とも思った。

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名古屋の株式会社nexott (ネクスオット)という小さな空調設備会社が開発した「マルン換気」と言うシステムだ。既存のトイレ設備に少し手を加えることで、トイレを汚物処理場からクリーンルームに変身させる、コロンブスのたまご的「発想の転換」に思え、聞いているだけで不思議な感覚になったので、紹介したい。弊社は当初、製品を取り巻く社会ムーブメントを興していく相談を受けていたが、先にデザイン性を高めた高級仕様のプロデュースで関わっている。今夏までに、ラグジュアリー版の試作とテスト設置を推進していく予定だ。

メディシンクでは、大手企業のデジタルヘルスのコンサルだけでなく、今までの販促や営業戦略とは一線を画す相談が少なくない。SDGsだけでなく、こうした社会活動的なアプローチは、大手だけでなくみんなが意識して取り組むべきだと思う。

さて、蔓延防止措置が明けたこの2022年春に、遂にコロナは収束しマスク以外は普通の生活に戻ったような感覚になっている人も少なくないと感じるのは私だけだろうか?

残念ながら世界的には未だ終息には至っておらず、本格的なwithコロナ時代に突入している状況だ。そして今後も、新たな感染症が様々な国や地域で発生すると言われ、私たちはその度に対策を求められることになる。

そんな中、ネクスオットの渕上社長は、清潔好きな身内の「公衆トイレはおろか店舗のトイレには入りたくない」という一言をキッカケに、トイレで感染対策出来ないかと考え始めたのだそうだ。この方の感染への恐怖は相当な訳だが、外出先でのトイレ利用を敬遠して水分補給まで控えた結果、熱中症で倒れてしまうという非常事態に発展するに至って、「ひょっとすると、これは大きな社会問題なのではないか」と、調査に着手。調べていくと、客船ダイヤモンドプリンセス号の集団感染での国立感染研の検査で「ウィルスが多数検出されたのはトイレ周辺」だったという報告を知るに至って、製品開発を加速させた。というエピソードを聞いて応援したくなった。

あるアンケートでは、「外出時のトイレ利用に抵抗がある」と回答した方は、なんと70%を超え、その中でも特に「ドアノブや洗浄レバーの除菌」や「臭い」を気にする人が多かったとのこと。これはもう、「トイレの感染対策は不可避」と感じるのは、私だけでなく読者の皆さんも同じだろう。

従来のトイレ換気設備は非常に簡素で設計も古く、「足元から空気を吸い上げて天井から排出する」仕組みとなっている。つまり、「便器周辺の低い位置に集まる病原体や嫌なニオイの空気」を天井から吸引する際、私たちの体全体と顔を通過させているのだ。えっ、なんで?と耳を疑いたくなる換気ルートになってしまっている。

渕上社長はここに着目。逆転の発想で、天井から新鮮な空気を出し病原体や嫌なニオイの集まる低い足元から排出する「トイレ内で強制的に下降気流を生み出す仕組み」を考えた。

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下降気流となったトイレ内では、私たちは常に新鮮な空気を吸うことができる。さらに天井の給気ユニットに「オゾン発生装置」を組み込み退出時に自動運転させ、便座や洗浄レバー等を集中的に除菌・消臭する室内換気システムに昇華させたることに成功した。

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これが、施設や店舗などに普及すれば、トイレを安全地帯に生まれ変わらせ、外出時の不安やストレスを大幅に軽減できる。

「飛沫の唾液やウィルスは空気より重く、最終的には地面に帰着します。それを拾い上げるのは靴や靴下、スリッパ等の足元からと考えられるわけです。日本と欧米で感染率に大きな差が出た要因のひとつとして、靴を脱ぐという日本ならではの習慣によるところが大きいのではないか、と考える専門家もいらっしゃるとお聞きしています」(渕上社長、談)

この”下降気流”と”オゾン”の組み合わせによるトイレ換気システムの普及によって、コロナ以降もより安心できる室内環境が期待できそうだ。高級版の製作が進んだら、また皆さんにお知らせしたい。ご興味ある方は、モニター設置を相談できるので、弊社までお問い合わせください。

八村 大輔