ストレスの評価と対処法〜後編〜

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●3種類のストレスコーピング

ストレスコーピングには

①課題優先対処法=ストレスの原因を分析し対処する
②回避優先対処法=ストレスを避ける
③情緒優先対処法=友人などに愚痴をいい、共感し合う

の三つの方法があります。

何かストレスがあると感じた時は、誰でもそのストレスの原因を分析して解決しようとしています。自分が抱えているストレス状態の原因を分析し、その原因を解決する手法を取ることは大切で、これを課題優先対処法と呼びます。

しかし、私の外来を受診してこられている患者さんの話を聞いてみますと、実際には解決できないストレスを抱えておられる方も多く、体調を崩しておられます。このような場合は、可能であればできるだけストレスと感じる状況に出くわさないようにすることをお勧めしています(回避優先対処法)。ストレスに陥った原因が他人である場合、自分は正しいのだからと自分の行動を変えない人をよくみかけますが、そうしていると自分の免疫力はしだいに下がってしまいます。

たとえば、インフルエンザが流行している時期に電車で座っていたとします。途中の駅から、咳を繰り返している方が自分に近寄ってこられた場合、自分が最初から座っているのだからと、その席に座り続けることを選択する方がおられますが、それはあまり良い選択ではありません。何故なら、インフルエンザに感染しないかと怯えながら座っていると、免疫力が低下してくるからです。

もし、刃物を振り回している人が近づいて来たら、だれでも怪我をしないように逃げると思います。免疫力が低下することは怪我をすることと同じですので、このような場合は席を譲って場所を移動されることをお勧め致します。

ここでは、インフルエンザを例にあげましたが、誰かと意見や立場が対立した時に、自分の方が正しいと考えて一切妥協せずにストレスを抱え込んでいるならば、同じ状況に陥っています。健康で余力がある場合は、このような選択肢もあるかもしれませんが、もし体調が崩れやすい時はストレス環境からはいったん離れることが大切です。

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最後に、現実社会ではストレスの原因を解決できない、逃げ出すこともできないこともあります。このような時にお勧めは、友人や同僚、家族のヒトに自分が陥っている状況を説明し、理解してもらうことです。そして時には、怒る、泣く、わめくなどの感情に表すことも大切です(情緒優先対処法)。たとえ、ストレスが解決できない状況でも自分一人で悩むのではなく、周囲からの理解を得ることや一度自分の感情を表に出すことでストレス状態は軽減することが知られています。

日頃心掛けるべき予防法としては、ポジティブシンキングをお勧めしています。何事もイヤイヤやっているとストレスのもと。長期のストレスは神経・内分泌・免疫系の悪循環を引き起こします。嫌なことはすぐ忘れる。何か嫌なことをやらされても、成長するために天が与えた試練だと都合よく解釈してしまえばいい。そして疲れたときはすぐ休むこと。適度なスポーツをして心地よい疲労を得ることも、心身のリフレッシュには役立ちます。休息と心地よい疲労をうまく組み合わせると、疲労回復にも役立ちます。

また、笑いを生活の中に取り入れることも重要です。笑いは、特に免疫力の低下した人ではNK活性などを回復させる作用があり、例え1日30分でも笑える時間をできるだけ作るようにお勧めしています。




医師:倉恒弘彦(くらつね・ひろひこ)
プロフィール
大阪市立大学医学部客員教授として、疲労クリニカルセンターにて診療。1955年生まれ。大阪大学大学院医学系研究科招へい教授。日本疲労学会理事。著書に『危ない慢性疲労』(NHK出版)ほか。

※この記事は、弊社提携先の株式会社FMCC(倉恒弘彦代表)のコンテンツを連載するシリーズです。「疲労関係」の講演や臨床試験など、弊社までお気軽にお問い合わせください。




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