CES 2019 世界最大のテクノロジーの祭典

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CESトップ写真
CES2019 @ラスベガス

毎年明けに北米ラスベガスで行われるCES (Consumer Electronics Show)に行ってきました。

日本でもすでに様々なメディアが取り上げているので、
今日は現地視察ならでは、の視点でレポートしたいと思います。


ちなみに、このCES、日本では「セス」と呼ぶ人が多いので、
そちらの呼称は聞いたことがある、という方もいらっしゃるかも知れません。

しかし、これは日本特有の呼び方で、正式には「シーイーエス」です。
FBIをフビィと呼ばないのと同じなので、気をつけたいですね。。。


メルセデスベンツ
メルセデスベンツEV

もはや家電の領域を越えて

さて、このCES、名前の通り、正式には「家電ショー」です。
実際数年前までは世界中の家電メーカーが製品や技術を発表する場でしたし、
今でもこうした家電メーカーは参画しています。


車内
次世代自動車の車内の様子

しかし、数年前から自動運転技術やEV(電気自動車)をきっかけに、一気に車業界の存在感が増し、
今までの家電メーカーも、自動運転技術など、車にまつわる技術展示が多くなりました。
そのため、すでに家電というくくりでは語り切れないイベントになっています。
タイトルに「世界最大のテクノロジーの祭典」とうたったのもそのためです。


私はメディア関係者として視察したので事前のプレスカンファレンスなども出席できましたが、
出展企業の関係者も含めると一般公開(4日間)での来場者数は昨年のデータで約18万人強。
会場は複数にまたがり、シャトルバスで移動するため、会期中に全てを見尽くすのはほぼ無理と思われます。。

さて、今年はどうだったのでしょうか、、


5G
高速通信技術 5G

2019年は5G元年

日本でも少しずつ話題になってきている次世代の高速通信技術である5Gが、
いよいよ本格的に展開される、とあって、5Gに注目が集まっていました。
特にUSで昨年他社に先駆けて5G通信サービスを市場導入したVerizon(通信キャリア)はプレスカンファレンスでも、
5Gによって世界中のインダストリーやライフスタイルが変わることを強調していました。

特に緊急の遠隔医療や災害対応など、遅延や途切れがあってはならない場面での活躍が期待されます。
つまり、単なる高速大容量化だけではない、というのがポイントですね。
自動運転やAIと絡めて、こうした大きな革新技術の台頭を「Disruptive Technologies(破壊的なテクノロジー)」と形容しますが
現在の世界中の社会不安とあいまってか、21世紀もまだ20年足らずながら、すでに世紀末かのような印象を受けるほど、
私たちは大きな変化の途上にあることを感じます。

願わくば、それがポジティブなものであってほしいと思いますし、そうしていきたいですね。


LG
LG ロール型TV

家電で飛び抜けた存在感を発揮したLG

数年前までは薄型テレビがどうとか、そんな分かりやすい話題で盛り上がっていましたが、
5Gや自動運転など、かなり社会に影響を与えるインフラ周りの技術が台頭することで、
家電業界の関心もどちらかと言えばそちらに移行していました。

もちろん、家電がすたれた訳では全然ないので、ガジェット好きとしては引き続き応援したいと思いますが、
そうした中でちょっと飛び抜けた印象を受けたのがLGでした。
もうご存知の方もいらっしゃるかも知れませんが、曲がるディスプレイの技術を使って、
台座部分に巻き戻る世界初のロール型TVを発表するなど、
成熟カテゴリーでもまだまだできる!という意気込みを感じました。


impossible food
Impossible Food

社会課題に向かう技術

ここまでは例年CESとして取り上げるような話題なので、あまり驚きはないかも知れません。
しかし、今回わたしが特に注目したのはCES初のフード業界の参画。
カリフォルニア拠点のスタートアップ、Impossible Foods社です。

技術展示やガジェットの紹介がある訳でもないので、CESとしてはかなり異質の存在感でしたが、
そこで披露していたのはImpossible Burgerというバーガー。
見た目も普通のバーガーですが、実はこれ、肉を一切使用していないのです。
植物ブロテインと油だけで食肉の旨味と歯ごたえを追求するバイオベンチャーでもあるのですが、
彼らの起業の理由は将来の食糧難へのソリューションです。

しかし、そこはカリフォルニア。
崇高な理念でも美味しくなければ意味がない、とばかりに、その味を適宜アップデートしています。
今回のはImpossible Burger 2.0。


肉を一切使用していないハンバーガー

実際に試してみましたが、普通に美味しいハンバーガーでした!
残念ながら日本上陸の予定はまだない、とのこと。

最近は培養による人工肉の登場もあり、フード業界のテクノロジーも目が離せませんね。


空気から水を産生
空気から水を産生する装置

最後にもう一つ、社会課題に取り組む企業をご紹介しましょう。
イスラエルのWatergenという会社。
先進国ではあまり話題になりませんが、水は大変貴重な資源。
世界にはまだまだ安心して飲める水のない国や地域がたくさんあります。

この問題に対しては、従来、濾過(ろか)技術が中心で、泥水から飲み水を作る、といったことは行われておりました。
しかし、このWatergenの発想は、なんと空気から水を作ろう、と言うのです。
言ってしまえば当たり前のようですが、空気という豊富にある資源を水に変えるので、ユニバーサルに使えるのがポイントです。
とは言え、湿度30%は必要とのことですが、業務用の巨大な装置なら1日あたり900L!ほどのクリーンな水が生成されるというから驚きです。

今回新発表された家庭用の小型版でも1日25Lというので、かなり可能性を感じますね。
大きさは、オフィスなどで見かけるウォータークーラーよりちょっとだけ背が高い程度でしょうか。
実際に会場の空気から生成された水を飲んでみましたが、、普通の水です!無味無臭。


空気から水を産生_サーバー
家庭用サーバーモデル

普通すぎて拍子抜けしそうですが、その普通さがかえって価値の高さなのですね。
このように社会課題に向かう技術が多く表に出てきたことも、今の不安定な世相を反映しているのかも知れません。


5Gも自動運転もこうした資源に対する対策も、全て私たちの生活基盤を構成する社会価値です。
従来個人の生活向上を中心に訴求してきた家電の技術や製品の展示会が、
今こうして社会全体の価値向上に目を向け始めていることは注目に値します。

現代は第四次産業革命の時代とも呼ばれています。
変化は一部のことではなく、全体に影響するのでしょう。
そんな視点で身の回りの変化を見直してみるのも一興かも知れませんね。