ストレスの正しい理解〜後編〜

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前回記事では、ストレスの正しい意味とは何か? ストレスとはどんな状態か? ストレスにはどんな種類があるのか? などを説明しました。今回は、ストレスの正しい理解〜後編〜として、ヒトが種々の生活環境ストレス(ストレッサー)に遭遇した場合の心身のストレス反応について説明していきたいと思います。

●日常生活で遭遇するストレス
ヒトが種々の生活環境ストレス(ストレッサー)に遭遇した場合の心身のストレス反応を考えてみましょう(下図)。

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精神的な負荷や過重労働、騒音、温熱環境などに遭遇した場合、大脳と視床下部はストレッサーによる刺激を認識し、①血管系の反応(内分泌系反応)と②自律神経系の反応の大別して2つのストレス応答が認められます。

①血管系の反応(内分泌系反応)は、視床下部・下垂体・副腎皮質系(HPA axis)の反応としてよく知られています。ストレッサーを認識した視床下部は、脳下垂体にCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)を放出し、その刺激を受け取った脳下垂体からはACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が放出されます。副腎皮質では、ACTHの刺激を受けて抗ストレスホルモンとも呼ばれているコルチゾールなどが分泌され、糖新生の促進、胃酸分泌の促進、免疫力の低下などが誘導されます。

また、②自律神経系の反応としては、ストレッサーを認識した視床下部は交感神経系の興奮を高めることにより、副腎髄質を刺激してノルアドレナリンなどの分泌を行い、血糖値の上昇、血管収縮、心拍数の上昇、血圧の上昇、瞳孔の散大、消化器運動の低下、闘争反応などが誘導されまして、「オオカミとヒツジ」でご紹介しました命を守るために必要な防衛反応に結び付いています。

●生活環境ストレスに伴う心身の健康状態
ヒトは種々の生活環境ストレスにより、適度の刺激を受けて脳・神経系の緊張とリラックスのバランスも保っています。

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出典:日本経済新聞(平成22年11月6日)

通常、生活環境ストレスによる刺激 を受けますと、一時的な体調の悪化がみられた後に、ストレス状態を克服するための抵抗期(適応反応がみられる時期)がみられます。このストレス抵抗期の内にストレス状態が解消されれば、元の健康な状態にもどるのですが、ストレッサーが長期に持続する場合やその強度が非常に強かった場合には、生体は次第に疲弊して、不安や無気力、抑うつ状態に陥ってきます。

このストレス抵抗期の場合、自覚的な体調不良がみられない隠れ疲労と呼ばれるような状況も散見されまして、ストレス状態が長期間続いているとたえず交感神経の働きが優位になり、神経・免疫・内分泌系のバランスが崩れて慢性的な疲労状態に陥ってきます。したがって、疾病の予防に向けてはこの段階で早期に発見して対処することが大切です。




医師:倉恒弘彦(くらつね・ひろひこ)
プロフィール
大阪市立大学医学部客員教授として、疲労クリニカルセンターにて診療。1955年生まれ。大阪大学大学院医学系研究科招へい教授。日本疲労学会理事。著書に『危ない慢性疲労』(NHK出版)ほか。

※この記事は、弊社提携先の株式会社FMCC(倉恒弘彦代表)のコンテンツを連載するシリーズです。「疲労関係」の講演や臨床試験など、弊社までお気軽にお問い合わせください。




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