“おうちWORK”
コロナで加速する働き方とオフィス改革

  • facebook
  • twitter

こんにちは、八村です。
新型コロナを機に、リモートワークの加速や働き方に大きな変化が起こりそうです。そしてこれは、結果的にオフィス概念の変化までにも至るかもしれません。

緊急事態宣言が解除され、通常の通勤に戻られる方も多いと思いますが、私は独立する時の理由のひとつに「満員電車からの離脱」がありました。人一倍ワーカホリックな自分の働き方は、オフィス内にも所謂常識的な日本人サラリーマンのライフスタイルにも属さずなかなか苦労しました。

人生の多くを過ごす空間をコンクリートジャングルで過ごしたくないという思いと、鉄の塊の列車の中で往復2時間をギュウギュウ詰めにされる苦痛から逃れたい、そんな気持ちが強かったことを思い出します。もちろん、一番の独立理由はウェアラブルを世に送り出したい、というベンチャー魂からでしたが、多くの人が当たり前と受容している“通勤”という呪縛から逃れたい願望はかなりのものでした。

自分の子供たちにも、「現在の通勤電車は、昔の奴隷制度下でトロッコに押し詰められた労働者を教科書で見て“可愛そう”と感じることと同じ様に、数十年後には過去の信じられない歴史として、振り返られるに違いない」と、話したりしたくらいです。

それが、まさかこんなに一斉に通勤しない(できない)状況になるとは思いませんでした。オフィスワーカーだけでなく飲食店も、ホテルも、工場も、一部を除くすべての方々が勤務地に移動しない状況が生まれたわけです。

この社会現象で大変な思いをされている方も多いので単純に喜ぶことは出来ません。しかし、痛勤からの開放を多くの方々が強制的にも体験することになったことは、今後の社会をより人間らしい生活に近づけていく上で、大きな転換点になるかもしれないと感じています。つまり在宅勤務がコロナ期の特殊現象ではなく、働き方の大きな変化となる可能性があり、在宅勤務こそが、「基本的な働き方」になるのではないか、そして結果的にその方が良かった、と気づくことになるのではないか、ということです。

もちろん、すべての仕事を在宅勤務に切り替えることは不可能です。例えば製造業では工場に出勤する必要がありますし、対人サービス業も全面的な在宅勤務への切り替えは困難です。しかし、少なくともサービス業、(特に金融業やITなどの専門性付加価値の高い「高度なサービス業」の従事者)やあらゆる企業の管理部門については、在宅勤務が基本という変化が起きる可能性が高いと感じています。新聞でも大手企業各社から「在宅勤務継続」や「時差出勤」の発表が相次いでいるようです。
出典:日経新聞(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59584650W0A520C2MM8000/


GMOインターネットグループは、1月27日から渋谷区、大阪市、福岡市のオフィスに勤務するグループ従業員4,000人をいち早く在宅勤務に切り替えたことで知られていますが、現在も、業務上やむをえず出社が必要な場合のみ感染予防対策を講じたうえで一部出社を認める体制を続けています。

「ニコニコ動画」を運営するドワンゴは、動画編集作業などは自宅対応できていて支障が無いことから、なんとコロナ収束後も全社員約1,000人を原則として在宅勤務とする方針を固めたそうです。在宅勤務体制に完全シフトすることでオフィス賃料の削減につながり、削減分を国内の全従業員に還元する「オフィスコスト還元プログラム」を実施するとまで宣言しています。都心に通勤しないで良くなれば、郊外や田舎に住んで働くこともでき、住居費や飲食費を節約できる上、子供の育成環境もより良くすることが出来ます。

企業側も、オフィスコストの削減に始まり、多様な働き方を認めることで人材の確保にも多様性を生めることでメリットが出てきそうです。オフィスは、「従業員が毎日集まる場所」から、重要な会議や共同作業のためのサテライトな「ミーティング場」「コミュニケーションスペース」に変化していくことになるに違いありません。

一方で、この事はオフィス市場に大きな影響を及ぼします。オフィスの大部分は不要であると、多くの企業や構成員である私たちが、その本質に気がついてしまったことです。アフターコロナでも、少なくとも都心オフィスに全員分の業務スペースを確保する必要性は無いと判断する企業が増えることになれば、近年続いてきたIT系企業の誘致合戦やオフィス賃料の高騰が一気に逆転し、解約ドミノが始まればオフィス市場は大きく崩れ、ゆくゆくは都市開発の方向性にまで大きな影響を及ぼすことになるでしょう。

一方で、在宅勤務化ラッシュでは、新たな市場が形成され始めています。住宅事情が良好でない日本の場合、スペースの問題、家庭内の音の問題やパソコンのセキュリティー問題などが気になるところです。こうした問題は、各地にサテライトミーティングスペースを
分散配置することで解決できそうです。


日本では、さらに「働き方」の基本に関わる問題があります。厚生労働省の調査によると、テレワークの実施はオフィスワーク中心の人でも全国平均で約27%にとどまりました。東京でも約52%です。日本で在宅勤務があまり進まないのは、技術的な理由によるというよりは、「日本型の働き方」による面が大きいと思われます。

在宅勤務で働く場合に最も重要なのは、成果主義、ひいては能力主義に転換しなければならないという点です。ところが、日本の組織では、これまでは、成果よりもオフィスにいるかどうかが評価されていました。上司に「おい」と呼ばれたときに、「はい」と答えられるかどうかが重要だったのです。テレワークになってビデオ会議が導入されても、中間管理職は、「部下がPCの前にいるか?」をチェックするのに躍起になっています。

こうした中間管理者は「いるか族」などと呼ばれ始めているようです。こうした人々がはびこる組織から脱却できるかどうかが、日本における在宅勤務の成果を決めることになるのではないでしょうか。

今後の企業経営には、感染対策を織り込むことが必須になります。ファイナンス、従業員の行動規範、接客ルール、パンデミック時対応など、今回の緊急事態宣言下における緊急対応ではなく、通常経営の中に対策を落とし込む必要があります。メディシンクでは、ファイナンスと健康指標の専門家の部坂氏と事業継続コンサルの専門家である秋月氏と共同で「感染対策を経営企画に組み入れるコンサルティングサービス」を開始しますので、ご興味ある方はお問い合わせください。
下記から、部坂氏と秋月氏が登壇した、映画『感染列島』を題材にした緊急オンライン座談会「パンデミック映画から学ぶ行動変容と未来」のZoom録画データ視聴が可能ですので、ご覧ください。
https://www.facebook.com/154179495188691/videos/2896105443806351/

八村大輔