日本のクラスター対策は
他国と何が違ったのか?
「3密をもっとも早く見つけた国」の
経験値の凄みとは?

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株式会社レスキュープラスBCP作成支援担当の秋月です。

5月29日に、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が今後に向けた提言「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」を発表しました。その中にとても興味深い内容があったのでお伝えしたいと思います。

今回の提言では、これまでの感染状況を評価したうえで、今後の政策のあり方や、次の感染拡大に備えた安全・安心のためのビジョンを説いています。そのなかで筆者が非常に強い興味を覚えたのは、日本が欧米の先進諸国で起こったような感染爆発をなぜ抑えられたのか?という分析でした。

その最大の理由は、他国のクラスター対策が時間の流れに沿って「誰が誰に接触したか?」を調べるだけであるのに対して、日本のクラスター対策はそれに加えて、時間を遡ってまで「感染者Aと感染者Bが過去に濃厚接触していた時間・場所はなかったか?」を解析したため、他国では発見できていなかった「3密」を突き止めることができ、それを防ぐ効果的な対応が実施できたということにありました。(後述のイラストをぜひご覧ください)。

またこの日本独自の手法は、もともと結核の感染対策の過程で培われた経験だそうで、これまた日本の重要な感染対策のインフラである、都道府県ごとの保健所が効果的に機能したのだそうです。

ちょっとワクワクするほど凄みのあるエピソードですね! では順を追って、要旨を紹介します。

理由(1)
もともと厚生労働省では、本年は東京オリパラに向けて未知の感染症の早期探知のための、前広な事例報告を求めていた。

理由(2)
日本では地方においても医療アクセスが良く、感染症が疑われる場合は胸部X線、CT検査(検査器械の設置台数は世界第一位)、PCR検査を行い、早期に感染を探知できた。

理由(3)
患者の早期発見を通じて、専門家会議は「患者の8割は他の人に感染させない」ことを早期から認識しており、また初期の疫学調査から、 諸外国では認識されなかった「3密」を避けるという効果的な対応策の発見に繋がった(下図)。

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出典:「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(令和2年5月29日)

理由(4)
また接触者調査の際には、「将来の感染者を探し出す」だけでなく、共通の感染源をとなった「場」を見つけ出すために過去への「さかのぼり」を行った。この分析によって「3密」の概念を早期に発見するに至った(下図)。

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出典:「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(令和2年5月29日)

理由(5)
こうした日本の疫学調査の特徴である「さかのぼり」は、もともと結核の調査手法として土台になっていた。こうして感染源に立ち返ってその後の感染を見逃さないようにすることがこころがけられており、早期の感染源特定、感染源の関係者の特定に繋がった。

ということだそうです。素晴らしいですね!




プロフィール
秋月雅史
1989年 日本アイ・ビー・エム入社。メガバンク担当営業を経験。1997年日系コンサルティング会社に転職、その後外資系・日系IT会社で新規事業の企画を担当。2007年からは企業・団体向けの危機管理体制構築、BCP 策定支援への取り組みをスタート。日本経済を牽引する大企業から中小企業まで多くの会社のBCP強化に寄与している。日本能率協会BCP講座担当講師。

日本能率協会:「BCP」対応編 研修講師に聞く
https://jmaqa.jma.or.jp/case/2019/06/04/23

株式会社レスキュープラス「BCPのSOS」
http://bcpsos.rescueplus.jp/?page=bcpsos


先月末に書かれた別記事「東京封鎖=ロックダウンは起こるのか?」も是非お読みください。
https://www.office-mica.com/magazine/entry/2020/03/30/164509/