疲労と酸化ストレス(活性酸素)との関係

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からだが疲れてくると、細胞レベルでは酸化ストレスが増加していることが多く、タンパク質や遺伝子に傷が生じています。そこで、最近では血液中の酸化ストレスを評価することにより、疲れの状態を客観的に把握することができるようになってきました。

●疲労のステージと酸化ストレス指標

私たちは、血液中の酸化ストレスについて、酸化ストレス値(d-ROMs)・抗酸化力値(BAP)((株)ウイスマー)を用いて評価してみましたところ、急性疲労(健常者が急性の心身の負荷により生じた生理的な疲れ)、亜急性疲労(2週間程度、過重労働が続いた時に生じた疲れ)、慢性疲労(半年以上、疲れが取れないような状態)では異なった変動パターンが認められ、疲労病態の有無とともに、疲労のステージについて判定できることがわかりました(図1)。

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図1.酸化ストレス値/抗酸化力値による種々の疲労状態の鑑別

健常者24名に対して精神作業負荷を加えて誘発した急性疲労モデルの評価では、酸化ストレス値(d-ROMs)と抗酸化力値(BAP)は共に上昇しています。しかし、2週間程度の残業が続いた亜急性疲労状態の被験者を調べてみましたところ、d-ROMsの上昇はみられましたがBAPの上昇はなくなり、ほぼ正常者の値と変わらない状態でした。そして、半年以上疲れが続いているような慢性疲労の病態ではd-ROMsは他の疲労状態と同様に上昇していましたが、BAPは低下していました。

まとめてみますと、どのステージの疲労病態でも血液中の酸化ストレスの程度を表すd-ROMsは上昇していまして、d-ROMsの上昇の有無で疲労状態か否かの判断ができます。一方、血液中の抗酸化力を示すBAPは、急性疲労は上昇、亜急性疲労は正常、慢性疲労は低下と、疲労のステージにより異なることがわかりました。 したがって、血液中の酸化ストレス値(d-ROMs)と抗酸化力値(BAP)を調べることにより、疲労の有無とともに疲労のステージを判定することができると考えています。




医師:倉恒弘彦(くらつね・ひろひこ)
プロフィール
大阪市立大学医学部客員教授として、疲労クリニカルセンターにて診療。1955年生まれ。大阪大学大学院医学系研究科招へい教授。日本疲労学会理事。著書に『危ない慢性疲労』(NHK出版)ほか。

※この記事は、弊社提携先の株式会社FMCC(倉恒弘彦代表)のコンテンツを連載するシリーズです。「疲労関係」の講演や臨床試験など、弊社までお気軽にお問い合わせください。




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