コロナ・パラドックス

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本稿は、ヘルスビット社代表の部坂(へさか)英夫氏と八村の共著でお届けするアフターコロナ(AC)のビジネスを予測する連載の第2回。ビフォアコロナ(BC)とはビジネスにおける根本的なルールが変わる事になるアフターコロナ。私たちの仕事環境に与える影響をシミュレーションし、出来得る限りの対策を打っていける準備をしたい。


中国からの報告(2020年2月20日時点)では、感染が確認された症状がある人の約80%が軽症、13.8%が重症、6.1%が重篤という割合だった。

例外はあるが重症化し易いのは高齢者、糖尿病、慢性腎臓病、肥満、心疾患、肺疾患等の疾患保有者であり、「健康」であれば重症化しにくいと考えられているのが現在である。

ステイホームは医療崩壊防止には有効であるが、運動不足に繋がる為、体力・筋力の減少から免疫力を低下させ将来の重症化率を高める可能性がある。現状、免疫力の維持・向上以外に有効な対抗手段が無い状況で、緊急事態宣言及び自粛要請の長期化は、経済的影響だけでなく、国民の健康状態(体力・筋力・ストレス)の悪化についても注意が必要である。

もちろん、解除されても直ぐに元通りに活動できるようになるわけではなく、企業経営は「対感染症シフト」を敷かざるを得なくなる。オフィス分散、対人接触機会の最小化、省人力化、顧客セグメントの見直し、場合によっては分社化までも考えられる。

オフィス分散は、大手企業では副業認可と相まって進み始めていた流れが一気に加速する可能性が高い。ただし、その需要を狙って都心部に多く展開され始めていた”コ・ワーキングスペース”の供給は、郊外や地方への展開にシフトしたり、空き家の活用など、分散距離の程度がさらに大きくなるだろう。

対人接触機会の最小化や省力化も、自動生産、自動精算機の更なる普及にはじまり、工場だけでなく様々なルーティンワークへの自動化の加速により、近年注目されてるRPA(Robotic Process Automation /ロボティック・プロセス・オートメーション)など、ホワイトワーカーの自動化も大きく進展することになるだろう。

顧客セグメントでは、費用対収益だけでなくリスク対収益の視点が必要になり、要求水準が高すぎるハイリスク顧客への対応の変更や削減が社員負担軽減の為にも必要になる事から、企業側からの顧客選別が進展するかもしれない。

夏休みの短縮や9月入学案が取り沙汰されている教育界においても、全員賛成を取り付けることは不可能な事から、リスク過敏者への対応に苦慮することが想像される。特に塾を含めた私学に関しては、そうしたリスク過敏な顧客に対して選別せざるを得ないと考える。

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旧来のコロナウイルス、インフルエンザウイルスは夏場に収束し、秋から冬に活発になる事が知られているが、新型コロナも同様の季節性を有すると推察される。主な要因として20度以上、湿度50%以上で飛沫感染が減少する事と、紫外線による殺菌効果が示唆されている。

東南アジアでは日本程明確な季節性が見られないが、衛生環境の違いによる接触感染が継続していると思われるので、夏場でも接触感染には注意が必要である。

日本は温暖な黒潮の影響で同緯度の地域に比較して湿度が高く、森林密度も高い。高温多湿は通常では不快指数として扱われてしまう事が多いが、対ウイルスでは有効に作用すると思われる。又、他国とは海で隔離されている事も対策上は有利である。

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この世界地図は森林の密度を表したもので、高さ5m以上を木として定義されています。
出典:デイリーニュースエージェンシー
https://dailynewsagency.com/2019/10/09/where-our-trees-grow-map-4nw/

つまり、我が国の夏場はこのまま感染が収束する可能性が高いと言えるのだが、国民全体の意識が感染症対策を忘れ始めた数カ月後の秋以降に、海外渡航者の受け入れなどの環境変化も含めて、第二波が襲来してしまう可能性を考えなければならない。

前回コラムでお伝えしたように、「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(平成24年法律第31号)は強毒性の鳥インフルエンザ(致死率60〜70%)を対象とした法律であり、新型コロナの脅威度では適用対象にならないと考えられていたため、本年3月同法を一部改正し「新型インフルエンザ等」にみなす事にして緊急事態宣言を発令した。

重要なのは今回、同法の適用ハードルを下げざるを得なくなった事から、新型コロナが収まっても、また新型コロナ以外の感染症でも、同じような事態が起こりうる事である。

新型コロナの第二波(変異して毒性を高める可能性もある)への対応はもちろんのこと、万が一にも強毒性鳥インフルエンザによるパンデミックの兆候が現れてしまった場合には、数ヶ月のシャットダウンを企業・家庭ともに想定すべきであり、その場合の対処法を具体的に検討しておくべきだろう。




今後の企業経営には、感染対策を織り込むことが必須になります。ファイナンス、従業員の行動規範、接客ルール、パンデミック時対応など、現在の緊急事態宣言下における緊急対応ではなく、通常経営の中に対策を落とし込む必要があります。

メディシンクでは、ファイナンスと健康指標の専門家の部坂氏と事業継続コンサルの専門家である秋月氏と共同で「感染対策を経営企画に組み入れるコンサルティングサービス」を開始しますので、ご興味ある方はお問い合わせください。

下記から、部坂氏と秋月氏が登壇した、映画『感染列島』を題材にした緊急オンライン座談会「パンデミック映画から学ぶ行動変容と未来」のZoom録画データ視聴が可能ですので、ご覧ください。
https://www.facebook.com/154179495188691/videos/2896105443806351/




プロフィール
部坂 英夫
ヘルスビット株式会社 代表取締役CEO 1980年、野村證券入社。プライベートバンキング、上場法人を担当。2017年、ヘルスビット㈱設立。プロポーション・筋力をスコア化した健康参考指標をクラウドで提供。健康指標の代表格であるBMI(体重kg÷身長m÷身長m)のみの業界に革新をもたらし、「低コストでの健康寿命の延伸の実現」と「筋力を意識した免疫力増強」を促進できる社会の確立を目指している。